IoTと聞くと、大規模な工場や工業用車両などで利用する、非常にテクニカルな産業用ツールと思い浮かべてしまうかもしれませんが、植物の栽培にも役立つということをご存知でしょうか?
毎年の農作物の収穫がどのようになるのかを予測することはほぼ不可能かもしれません。いくら計画を立てたところで、出来得る最善を尽くすほかなく、予期せぬ天候の変動や、安全に作物を栽培するために必要となるものの入手性など、数多くの要素によって左右される部分が大きすぎるからです。どの季節においても収穫を予測する一番の方法は、経験以外にありません。
そこで、ある公共団体と民間企業の共同事業が、害虫リスク、草勢、土壌養分、降雨量に関する過去11年分のデータを整理し、このデータをイタリア・フリウリ地方のぶどう園の栽培と検疫に関する記録と併せ込み、包括的なジオリファレンスマップにまとめました。この地域はイタリア国内で最も雨量が多く、害虫や病害へのリスクも高いため、高気圧シーズンの気候特性や害虫被害のパターンなどの情報を見える化できれば、ぶどうの収穫量を最大化する上で貴重なツールとなり得ます。
さらに、気象観測所からのレーダーデータも併せ込むことで、降雨、湿度、空気中の水蒸気のパターンを予測し、特定の害虫や病害リスクが発生する可能性を分析しました。これにより、ぶどうを保護し、不作のリスクを下げるために必要となるものの準備やその管理といった先手を打つことができるようになりました。
IoTの導入によって、各種センサからデータを集め、EurotechのEveryware Cloudにまとめることができるので、コンサルタント、研究者、農学者といった専門家たちが、必要な時にインテグレーテッドウェアラブル・デバイスからそのデータや情報へアクセスすることが可能となりました。それだけでなく、今回のユースケースが確立されたことにより、このシステムを他の穀物やオリーブ、果実などにも手軽に応用することができます。
このIoTシステムの情報共有によって、技術者、農学者、栽培者が協力し、それぞれが持つ知見と、新たな化学的且つ文化的なソリューションとを融合した、ぶどう栽培の将来を担う害虫対策戦略が開発されました。